絶版になっていて入手できなかった長谷川作品が、新装版として復刊しました。
「マーメイド・ヘブン 新装版」CRコミックスより

難病の治療法が開発されることに望みを託し、コールドスリープに入った主人公 獅馬渡(しじまわたる)。
夏休みの少し前に眠りにつき、次に目覚めた彼の目に飛び込んできたのは、足のある人魚だった。
渡が目覚めたのは、300年後の世界。
そこは地球温暖化により全ての文明が海に沈んだ世界。
彼は女の子4人だけの海賊団に、失われた文明の知恵を知る者 "卵人間" (コールドスリープのポッドの形からそう呼ばれる)として、サルベージされたのだ。
渡と4人の女海賊(マーメイド)、常夏の天国(ヘブン)での冒険が始まる。
このマンガで面白いのは、他の長谷川作品で使われたモチーフが、形をかえて再利用されていることなんですね。
・コールドスリープ
「鋼鉄の狩人」「クロノアイズ」で使われた小道具です。
"難病の治療法発見に希望を託す" というのは、クロノアイズで使われたネタです。
「鋼鉄の狩人」のキッドは、理由は明かされませんでしたが、コールドスリープで超未来に蘇生します。
そうそう、「メデューサブレード」のペルセウスもコールドスリープで現代に現れましたね。
・未来の地球に現代の少年が…
"手違いで忘れられ、はるか未来に偶然発見される" 「鋼鉄の狩人」の主人公、キッドの境遇と同じ。
クロノアイズで、航時機を開発した少女(ハデスの母)も、同じく偶然が重なって超未来に蘇生しました。
・文明の失われた未来
「鋼鉄の狩人」と同じですね。
密林か、海かの違いはあっても、過去の戦争や環境破壊によって文明が失われた未来世界が舞台です。
・生体兵器
これもよく使われます。だいたい女の子が怪物のような生体兵器の頭脳ユニットとして使われます。
・女の子だらけ
これは長谷川作品の定番。
・女の子が無意味にはだか
これも長谷川作品の基本(笑)
エロにならないのは画風なんだなぁ。
・男の子が女の子を救う
これも長谷川作品の基本シノプス。
長谷川作品って、なんのかんの言って、基本は「男の子が、女の子のためにがんばる」お話なんですね。
「マップス」も「ダイソード」も、「クロノアイズ」も…知ってる限りではほとんどのお話がそう。
最初は「普通の男の子」だった主人公が、女の子のためにがんばってるうち、宇宙を救っちゃったり、世界を救っちゃったりの大冒険に発展するパターンが多いです。
さて。
ここまで分析すると、
要するに過去作品の焼き直しでメシ食ってんの?と、思われそうですが、
ま、そうなんですけど。言い換えれば、作品作りの姿勢がブレないともいえるわけで、その証拠に、ちゃんと
どれも面白い
作品に仕上がってるんですね。
奇をてらわない、王道的な少年漫画フォーマットで、王道的なガジェットを使い、王道的なSF・ファンタジー作品を作って、どれを読んでもちゃんと楽しめるというのは、ある意味ひとつの職人芸です。
私は、
長谷川裕一はマンガ職人である
と、考えます。
はっきり言って、長谷川裕一の画は「マップス」開始当時からすでに古臭い感じで、今でもそれは変わりません。
長谷川先生は、描き続けるかぎり「古臭い画」という評価がついて回るでしょう。
連載が超ヒット作になって、アニメが大人気に…
と、言う展開はまずないと思います。
でも、きちんと練られたストーリー展開が構築され、読んでハズレのない作品を長く発表し続けるのは、今までもそうですし、今後も変わらないでしょう。
メジャーとマイナーの真ん中ぐらいのポジションを常にキープし続けるタイプの作家ではないでしょうか?
「マーメイド・ヘブン」も、詳細はわかりませんが、どうも雑誌側の都合で連載終了したか、読みきり連作企画が立ち消えした雰囲気。
ですが、同じモチーフを使いまわしてるにもかかわらず、まったく違う味付けで、まったく違う面白さを作り出せるのは、まさに "職人" 長谷川裕一らしいお仕事なのではないでしょうか。
作中で7つあると語られた「失われた文明の遺跡」の2つまでしか出ていないあたり、続きを描く気でいたような感じですが、いずれ続きが描かれることを期待したい作品です。